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・過剰診断が多いと言われる乳癌
欧米では、乳癌検診(マンモグラフィー検診)を受けても死亡率は下がらないという報告が相次いでいます。
早期ガンで不要な手術を受ける人もおり、取らなくてもいい乳房を切除するリスクや、手術、放射線、抗がん剤などの治療で命が縮む恐れもあると言われているのです。
それどころかある研究では、過去に検診で発見された乳癌の1/3にあたる130万人もの米国人が、無用な手術を受けたと推計されています。
・日本の乳癌検診
日本でも、乳癌検診の普及によって「非浸潤性乳管がん」と呼ばれる超早期の乳癌が見つかるようになりました。
この中には、放置するとがんが広がって、命取りになるものもありますが、ずっと広がらないまま止まり、命を奪わないものもあると言われています。
がんがみんな同じ性質なら、全員転移するか、全員転移しないかのはず。
それがみんなバラバラなのは、がんがみんな同じ性質ではなく、がんには転移するもの(本物のがん)と転移しないもの(偽物のがん)の2種類ある、ということです。
・現代の医学
しかし、残念ながら現在の医学では、どれが放置していい病変かを区別できません。
そのため「乳がん」と診断されたら、ほぼ全員が治療を受けることになります。
良性腫瘍は、見るからに善良な顔つきをしているのですが、偽物のがんはいわば「悪人顔の善人」で、本当の悪人と見た目では区別がつきません。
そのため、病理検査は本物のがんも偽物のがんも「がん」と診断するのです。
・過剰診断の弊害
その中に、本当なら取らなくていい乳房を切除された人や、不要な手術、放射線、抗がん剤などによって体にダメージを受け、命を確実に縮めた人はいます。
このように、がん検診や検査などによって、治療の不要な病変をもつけてしまうことを「過剰診断」と言います。
・若い女性の乳がん検診、ちょっと待って!
乳がん検診は30歳までは確実に受けなく良いでしょうと大竹真一郎先生は言っています。
この年代は乳腺が発達しているため、マンモグラフィで撮ると白っぽく写ります。
がんも白っぽく写りますから見つけにくいのです。
若い方は乳がんになる確率が非常に低く、検診で早い段階から放射線被曝の被曝を背負うのもデメッリットです。
受けた方がいいのは50歳に入ってから。
40代も乳がん検診を受けることで死亡率減少効果があるとは言えません。
・無駄な医療
乳癌の多くは放っておいても大きくならないか、小さくなってしまうものが多いことがわかっています。
ところが現代医療でマンモグラフィをすると異常と見なされてしまい、病理検査をするとがんとと診断されて、手術から抗がん剤、放射線まで、ありとあらゆる治療をされてしまう。
経済面ではもちろん、肉体や精神的な面でも、本当なら受けなくていい大きな負担を受けてしまうのです。
しかも、無用な検診を受けなければ何事もなく過ごせた人も「早く検診を受けて見つかってよかった」と言っているのです。
・「早期発見、早期治療」が全てではない
例えば子宮頸がんや大腸がんのように、本当の「早期発見・早期治療」を実現でき、実際に多くの命を救っている検診がある一方で、そのスローガンが過剰診断につながってしまう検診もあります。
乳がん、前立腺がん、甲状腺がんなどの検診では、そのリスクがとくに高いといわれています。
・検診をやめたら、がん死が減った村
検診をした人々としない人々とで生存率に差がないことを、見極めた診療所の医師が、行政や村民に働きかけ村の集団検診を廃止。
その結果、それ以前の5年間には村民死亡者の6パーセントを占めていた胃がんが、その後の5年間では2.2パーセントと、半分以下に減ったのです。
検診をやめたら、がんで死ぬ人が減ったのです。
おそらく、胃がん検診がなくなったことで、自覚症状もないのに検診を受ける人がいなくなり、小さながんや、偽物のがんが見つかることが、ほとんどなくなった。
そのため、無駄な治療を受ける人が減り、手術の後遺症や抗がん剤の副作用などで亡くなる人も減った。
まさに、検診ががんを作っていたと言える事例です。
検診をやめたことで、村民の心身への負担が減り、胃がんで死ぬ人が減り、村の財政への負担も減ったのです。
参考資料
宝島社 医者が飲まない薬、受けない手術
光文社新書 近藤先生、「がんは放置」で本当にいいんですか?
著者 近藤 誠
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